【第3回/全10回】積分
コンデンサの電流と電圧の関係は積分で表されます。
今回は積分について学びましょう。
※すでに知っている人は飛ばしていいです。
積分とは
グラフの傾きをもとに、グラフを描く操作で、積分の反対になります。関数\(f(x)\)の微分は\(\int f(x)dx\)と表します。例えば、\(f(x)=2\)の積分は\(\int f(x)dx=2x+\mathrm{C}\)になります。但し、\(\mathrm{C}\)は任意定数(積分定数と呼ばれる)で、不定積分(後述)の時は必ず付きます。微分したとき0になる定数の代わりだと思えばいいでしょう。
※グラフでは\(\mathrm{C}=0\)としています。
\(f(x)=x\)の積分は\(\int f(x)dx=x^2+\mathrm{C}\)になります。
※グラフでは\(\mathrm{C}=0\)としています。
色々な関数の積分の計算方法
一般に\(n\neq-1\)のとき、\(f(x)=x^n\)の積分は次のようになります。但し、\(\mathrm{C}\)は積分定数です。
\[\int x^ndx=\frac{1}{n+1}x^{n+1}+\mathrm{C}\]
\[\int a dx=ax+\mathrm{C}\]
※\(a\)は定数
また、\(f(x)=\sin x\)や、\(f(x)=\cos x\)の積分は次のようになります。
\[\int \sin xdx=-\cos x+\mathrm{C}\]
\[\int \cos xdx=\sin x+\mathrm{C}\]
また、ネイピア数\(e=2.7...\)を用いた\(f(x)=e^x\)は積分しても同じ形になります。
\[\int e^xdx=e^x+\mathrm{C}\]
※これらの証明は高校でも習いません。覚えるものだと思ってください。
積分の性質
積分には次のような性質があります。但し、\(\int f(x)dx=F(x)\)で、積分定数\(\mathrm{C}\)は\(F(x)\)に含まれています(含まず、最後に足してもいいです)。
\[\int f(kx)dx=\frac{1}{k}F(kx)\left(=\frac{1}{k}F(kx)+\mathrm{C'}\right)\]
\[\int \{f(x)+g(x)\}dx=F(x)+G(x)\left(=F(x)+G(x)+\mathrm{C'}\right)\]
\[\int af(x)dx=aF(x)\left(=aF(x)+\mathrm{C'}\right)\]
下二つの性質は何となくわかるのではないかなと思います。
一番上の性質は例えば\(\int \sin ωxdx=-\displaystyle \frac{1}{ω}cosωx+\mathrm{C}\)のようなことで、傾きの変化が\(ω\)倍速くなった→一瞬当たりのグラフを描く量が\(\displaystyle \frac{1}{ω}\)倍になる→縦に\(\displaystyle \frac{1}{ω}\)倍される、と考えると良いでしょう。
※なお\(\int f(kx)dx=\displaystyle\frac{1}{k}F(kx)+\mathrm{C}\)が成り立つのは\(k\)が\(x\)によらない定数の時です。
定積分
今まで説明してきたのは不定積分といって必ず\(\mathrm{C}\)がつく積分です。
これは\(F(x)=x^2+1\)も\(F(x)=x^2+3\)も、どちらも傾きが\(f(x)=2x\)となるグラフだから、まとめて\(x^2+\mathrm{C}\)と表しているわけです。
それに対して次のように表される定積分は\(\mathrm{C}\)がつきません。なお、\(F(x)\)は\(f(x)\)の不定積分で、積分定数を含んでいます(が、打ち消されます)。
\[\int_a^bf(x)dx]=\left[F(x)\right]_a^b=F(b)-F(a)\]
定積分は例えば\(q(t)=\int_0^ti(t')dt'\)とすれば\(0\)秒から\(t\)秒までにコンデンサに流れ込む(溜まる)電荷を計算することができます(今回の\(t'\)は\(t\)の微分という意味ではなく\(t\)と別の変数\(t'\)ということです。\(i(t')\)を\(t'\)で不定積分した\(I(t')\)に\(t'=t\)と\(t'=0\)を代入して引くということです)。
例題
①\(\displaystyle\int_0^tI_m\sinωt'dt'\)を計算せよ(\(I_m\)、\(ω\)は\(t'\)によらない定数)。
②\(\displaystyle\int_0^tI_m(1-e^{-\frac{1}{RC}t'})dt'\)を計算せよ(\(I_m\)、\(R\)、\(C\)は\(t'\)によらない定数)。
答え
①\(\displaystyle\int_0^tI_m\sinωt'dt'=\left[-\displaystyle\frac{I_m}{ω}\cosωt'\right]_0^t=\displaystyle\frac{I_m}{ω}(1-\cosωt)\)
②\(\displaystyle\int_0^tI_m(1-e^{-\frac{1}{RC}t'})dt'=\left[-I_m(t'+RCe^{\frac{1}{RC}t'})\right]_0^t=I_m(RC-t-RCe^{-\frac{1}{RC}t})\)
※定数\(a\)の積分は\(ax+\mathrm{C}\)となる。
コンデンサの電流と電圧の関係
\(t'=t\)のコンデンサの電圧\(v(t)\)はコンデンサ\(C\)に流れ込む電流\(i(t')\)を用いて次のようになります。なお、\(Q_0\)は(\(t'=0\)にコンデンサに溜まっていた電荷です。
\[v(t)=\frac{1}{C}\{\int_0^ti(t')dt'+Q_0\}\]
\(\{\}\)でくくられた部分が\(t'=t\)までにコンデンサに溜まった電荷で、それを\(C\)で割った形になっています。
例えば、\(i(t')=I_m\cos ωt'\)の電流がコンデンサ\(C\)に流れているとき、コンデンサの両端子間に現れる電圧は\(v(t)=\displaystyle\frac{I_m}{ωC}\sin ωt+Q_0\)になります。
このページで覚えるべきこと
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\[\int a dx=ax+\mathrm{C}\]
\[\int \sin xdx=-\cos x+\mathrm{C}\]
\[\int \cos xdx=\sin x+\mathrm{C}\]
\[\int e^xdx=e^x+\mathrm{C}\] -
\(\int f(x)dx=F(x)\)、\(\int g(x)dx=G(x)\)のとき、
\[\int f(kx)dx=\frac{1}{k}F(kx)\]
\[\int \{f(x)+g(x)\}dx=F(x)+G(x)\]
\[\int af(x)dx=aF(x)\] -
\[v(t)=\frac{1}{C}\{\int_0^ti(t')dt'+Q_0\}\]