中学生でもわかる電子工作教室

入門書はあってもその次がない電子工作の学びを助けたいという思いで作られたブログです

【第6回/全10回】インピーダンス

 インピーダンスは前回のフェーザ法から導かれる「拡張されたオームの法則」上の概念です。これによって抵抗だけでなくコイルやコンデンサオームの法則上で扱うことができるようになります。

 なお、フェーザ法から導かれる概念なので、引き続き直流成分と初期条件の影響は無視し、十分に時間が経って安定した時の交流電流と交流電圧の関係についてのみ成り立ちます。

 

 

フェーザ法からの導出

 フェーザ法で考えれば(フェーザ法の特性上\(v=V_m\cos(ωt+θ)\)と\(i=I_m\cos(ωt+φ)\)の関係のみを考えている)、

\[\begin{cases}
v=Ri\\
v=L\frac{di}{dt}\\
v=\frac{1}{C}\int i dt
\end{cases}\]

より、

\[\begin{cases}
\dot{V}=R\dot{I}\\
\dot{V}=jωL\dot{I}\\
\dot{V}=\frac{1}{jωC}\dot{I}
\end{cases}\tag{1}\]

です(\(\dot{V}=V_me^{j(ωt+θ)}\)、\(\dot{I}=I_me^{j(ωt+φ)}\))。これは

\[\dot{V}=複素定数\dot{Z}\times\dot{I}\]

の形をしていて、抵抗部分が複素数\(\dot{Z}\)になっただけで完全にオームの法則と言えるのではないでしょうか。その証拠に、電流の式は

\[\begin{cases}
i=\frac{v}{R}\\
i=\frac{1}{L}\int v dt\\
i=C\frac{dv}{dt}
\end{cases}\]

なのですが、これをフェーザ法に通すと、

\[\begin{cases}
\dot{I}=\frac{\dot{V}}{R}\\
\dot{I}=\frac{1}{jωL}\dot{V}\\
\dot{I}=jωC\dot{V}
\end{cases}\]

となり、これを変形すれば式(1)に一致し、それぞれの電圧と電流の関係が拡張されたオームの法則上でも保存されているのが分かります。

インピーダンスとは

 抵抗の概念を複素数に拡張したもので、

\[\dot{V}=複素定数\dot{Z}\times\dot{I}\]

の複素定数\(\dot{Z}\)の部分です。

 抵抗\(R\)のインピーダンスはそのまま\(R\)、コイル\(L\)のインピーダンスは\(jωL\)、コンデンサ\(C\)のインピーダンスは\(\displaystyle\frac{1}{jωC}\)になります。

 また、両辺の絶対値、偏角を取ることで、

\[V_m=|\dot{Z}|I_m\]
\[(ωt+θ)=\arg\dot{Z}+(ωt+φ)\]

と、電圧と電流の振幅の関係と位相の関係はインピーダンス\(\dot{Z}\)の絶対値と偏角を使って求められることが分かります。

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※図では分かりやすいように絶対値を1にしている

 ちなみに、\(\dot{V}\)や\(\dot{I}\)の実数部分(水色の矢印)は実際に流れる電圧や電流を表します。

\[\mathrm{Re}(\dot{V})=V_m\cos(ωt+θ)\]
\[\mathrm{Re}(\dot{I})=I_m\cos(ωt+φ)\]

 さらに、インピーダンスの凄いところは、オームの法則と同じなので、直列抵抗や並列抵抗の計算式や、その他いろいろな法則がそのまま使えるところです。