【第2回/全10回】微分
コイルの電流と電圧の関係は微分で表されます。
今回は微分について学びましょう。
※すでに知っている人は飛ばしていいです。
微分とは
微分とは、グラフの傾きを出す操作です。関数\(f(x)\)の微分はプライム(\('\))をつけて\(f'(x)\)としたり、\(\displaystyle \frac{df(x)}{dx} \)と表します。例えば、\(f(x)=2x\)の微分は\(f'(x)=\displaystyle \frac{df(x)}{dx}=2\)になります。
\(f(x)=x^2\)の微分は\(f'(x)=\displaystyle \frac{dy}{dx}=2x\)になります。
色々な関数の微分の計算方法
一般に\(n\neq0\)のとき、\(f(x)=x^n\)の微分は次のようになります。また、定数の微分は\(0\)です。
\[(x^n)'=\frac{df(x)}{dx}=nx^{n-1}\]
\[(a)'=\frac{da}{dx}=0\]
※\(a\)は定数
また、\(f(x)=\sin x\)や、\(f(x)=\cos x\)の微分は次のようになります。
\[(\sin x)'=\frac{d(\sin x)}{dx}=\cos x\]
\[(\cos x)'=\frac{d(\cos x)}{dx}=-\sin x\]
また、ネイピア数\(e=2.7...\)は、\(f(x)=e^x\)という関数を考えた時に、微分しても同じ形になる数です。
\[(e^x)'=\frac{d(e^x)}{dx}=e^x\]
※これらの証明は高校でも習いません。覚えるものだと思ってください。
微分の性質
微分には次のような性質があります。
\[\{f(kx)\}'\left(=\frac{df(kx)}{dx}\right)=kf'(kx)\left(=\left. \frac{df(x_1)}{dx_1} \right|_{x_1=kx}\right)\]
\[\{f(x)+g(x)\}'\left(=\frac{d\{f(x)+g(x)\}}{dx}\right)=f'(x)+g'(x)\left(=\frac{df(x)}{dx}+\frac{dg(x)}{dx}\right)\]
\[\{af(x)\}'\left(=\frac{d\{af(x)\}}{dx}\right)=af'(x)\left(=a\frac{df(x)}{dx}\right)\]
下二つの性質は何となくわかるのではないかなと思います。
一番上の性質は例えば\( (\sin ωx)'=ω\cos ωx\)のようなことで、\(x\)軸の動きが\(ω\)倍速くなった→横に\(ω\)倍圧縮される→傾きが\(ω\)倍になる、と考えると良いでしょう。
※なお、\(f'(kx)\)は\(f(x)\)を\(x\)で微分した関数\(f'(x)\)に\(kx\)を代入したという意味で、\(g(x)=f(kx)\)の微分\(g'(x)\)は\(\{f(kx)\}'\)と表されます。
※また、\(\{f(kx)\}'=kf'(kx)\)が成り立つのは\(k\)が\(x\)によらない定数の時で、より一般には\(\{f(k(x))\}'=f'(k(x))k'(x)\)となります。
例題
①\(i(t)=I_m\sin ωt\)を\(t\)で微分せよ(\(I_m\)、\(ω\)は\(t\)によらない定数)。
②\(i(t)=I_m(1-e^{-\frac{R}{L}t})\)を\(t\)で微分せよ(\(I_m\)、\(R\)、\(L\)は\(t\)によらない定数)。
答え
①\(i'(t)=I_m(\sin ωt)'=ωI_m\cos ωt\)
②\(i'(t)=I_m\{(1)'-(e^{-\frac{R}{L}t})'\}=\displaystyle\frac{R}{L}I_me^{-\frac{R}{L}t}\)
※定数の微分は\(0\)となる。
コイルの電流と電圧の関係
コイル\(L\)に流れる電流\(i(t)\)と電圧\(v(t)\)の関係は次のようになります。
\[v(t)=L\frac{di(t)}{dt}\]
\(\displaystyle \frac{di(t)}{dt}=\displaystyle \frac{v(t)}{L}\)という形にすれば分かりやすいかもしれません。
電流の傾き(1秒当たりの増加量)は、\(v(t)\)を\(L\)で割った値になるということです。
例えば、\(i(t)=I_m\sin ωt\)の電流がコイル\(L\)に流れているとき、コイルの両端子間に現れる電圧は\(v(t)=ωLI_m\cos ωt\)になります。
このページで覚えるべきこと
- 定数の微分は\(0\)
- \[(\sin x)'=\frac{d(\sin x)}{dx}=\cos x\]
\[(\cos x)'=\frac{d(\cos x)}{dx}=-\sin x\]
\[(e^x)'=\frac{d(e^x)}{dx}=e^x\] -
\[\{f(kx)\}'=kf'(kx)\]
\[\{f(x)+g(x)\}'=f'(x)+g'(x)\]
\[\{af(x)\}'=af'(x)\] - \[v(t)=L\frac{di(t)}{dt}\]
【第1回/全10回】三角関数
最も基本的な交流である正弦波は三角関数で表されます。
今回は三角関数について学びましょう。
※すでに知っている人は飛ばしていいです。
三角関数とは
直角三角形って、直角以外のもう一つの角が分かれば同じ形になりますよね(相似)。
この角度\(θ\)(シータ)の時の b / a と c / a という比を表す関数が、三角関数\(\sin θ\)(サインシータ)と三角関数\(\cos θ\)(コサインシータ)という関数なのです。
\[\sin θ = \frac{b}{a}\]
\[\cos θ= \frac{c}{a}\]
※丸で囲むの忘れたけど気にしないで
例えば、\(\sin 30^{\circ}=\displaystyle \frac{1}{2}\)、\(\cos 45^{\circ}=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)です。しかし、これらの値は人間が計算して求めるのではなく、普通は三角関数表や関数電卓を使って求めます。
例題
① \(θ=30^{\circ}\)、\(a=20\)の時、\(b\)の値は?
② \(θ=45^{\circ}\)、\(c=10\sqrt{2}\)の時、\(a\)の値は?
答え
① 三角関数表や関数電卓で\(\sin30^{\circ}=\displaystyle \frac{1}{2}\)だから、\(b=a\sin30^{\circ}=10\)
② 三角関数表や関数電卓で\(\cos45^{\circ}=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)だから、\(a=\displaystyle \frac{c}{\cos45^{\circ}}=20\)
三角関数の拡張、三角関数のグラフ
上の説明だと三角関数は\(0^{\circ}<θ<90^{\circ}\)までしかないような気がしてしまいますが、実際の三角関数は次のように考えることで実数全体\(-∞^{\circ}<θ<∞^{\circ}\)で考えます。
下図は単位円(半径1の円)上に\(x\)軸からの角度\(θ(-∞^{\circ}<θ<∞^{\circ})\)の点がある図です(\(ωt\)は無視してください)。ここで\(x\)座標(黄緑の線)を\(\cos θ\)、\(y\)座標(オレンジの線)を\(\sin θ\)と定義するのです。
ここで、\(θ\)と\(\sin θ\)、\(θ\)と\(\cos θ\)をグラフにすると下図のようになります。
但し、θは度数法([°])ではなく弧度法(単位は無し、または[rad])で表しています。
度数法で表してもいいのですが、電子工作の世界では弧度法をよく用いるので弧度法で表しました。今後、角度は特に書かれていなければ弧度法で表すことにします。
弧度法は半径\(1\)、中心角\(x^{\circ}\)の扇形の円弧の長さ(紫の線)で角度を表す方法で、度数法との関係は次のようになっています。
\[x^{\circ}=\frac{\pi}{180}\times{x}\,\mathrm{[rad]}\]
\(90^{\circ}\)は\(\displaystyle \frac{\pi}{2}\,\mathrm{rad}\)、\(180^{\circ}\)は\(\pi\,\mathrm{rad}\)、\(270^{\circ}\)は\(\displaystyle \frac{3}{2}\pi\,\mathrm{rad}\)で、度数法で\(0^{\circ}\)から\(360^{\circ}\)は弧度法で\(0\)から\(2\pi\)となります。
なお、グラフを見てわかる通り、コサインとサインは次の関係があります。
\[\sin (θ+\frac{\pi}{2})=\cos θ\]
\[\sin (θ-\frac{\pi}{2})=-\cos θ\]
正弦波とは
最も基本的な交流である正弦波は、\(v=V_m\sin ωt\)(または\(v=V_m\sin (ωt+θ)\))で表されるグラフのことを言います。ここで\(V_m\)は振幅(正弦波の最大値(max))、\(ω\)は角周波数と言って周波数\(f\)と\(ω=2\pi f\)の関係があります。
例えば、振幅\(V_m=144\,\mathrm{V}\)、周波数\(f=50\,\mathrm{Hz}\)(1秒間に50回振動する)の正弦波は\(v=V_m\sin 2\pi ft=144\sin 314t\)となります。
このページで覚えるべきこと
- \(\cos θ\)は下図の\(x\)座標(黄緑の線)、\(\sin θ\)は\(y\)座標(オレンジの線)を表すこと。
- \(\sin θ\)と\(\cos θ\)のグラフは下図のようになり、\(\sin θ\)と\(\cos θ\)は\(\displaystyle\frac{\pi}{2}(90^{\circ})\)のずれがあること。
\[\sin (θ+\frac{\pi}{2})=\cos θ\]
\[\sin (θ-\frac{\pi}{2})=-\cos θ\] - \(\displaystyle \frac{\pi}{2}=90^{\circ}\)であること。
- 今後、角度は特に書かれていなければ弧度法で表すこと。
- 正弦波は\(v=V_m\sin ωt\)と表されること。